施工 Q−09:
デッキ合成スラブのひび割れ拡大防止について、設計、材料、施工上の留意点および、ひび割れが生じた場合の補修方法について教えて下さい。
A: コンクリートのひび割れ問題の解決は、現在の建築技術の中で困難な課題の一つと言われており、日本建築学会から「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」(2006年2月改訂 \3,150)が発行され、設計者、施工者が課題に取り組んでいますが、充分ではありません。デッキ合成スラブについても同様にひび割れを完全に防止することは不可能であり、ひび割れについて一般論として、2-4)のような原因が挙げられていますが、これまでの経験から下記の項目を現実的な対策としてお勧めします。

1.設計上の留意点
1) 小梁の剛性を大きくする。
  小梁の剛性が小さく、大梁との剛性の差が大きいと、スラブの変形による曲げ引張力が生じ大梁上や柱廻りにひび割れが発生しやすい。
2) ひび割れ拡大防止のため補強筋を設ける。
  大梁上、柱廻りに適切な補強筋を設けるのが望ましい。(図-1、図-2、図-3参照)

図−1 大梁上の補強例1
図−2 大梁上の補強例2
図−3 柱廻りの補強例

3) スパンとスラブ厚さの比を小さくし、配筋量を大きくする。
  デッキ合成スラブの配筋量は0.2%以上となっていますが、できるだけ大きくし、コンクリート厚さもデッキプレート山上から8〜9cmと厚くするのが望ましい。
4) デッキプレートは各溝で梁に接合する。
  デッキプレートは薄板の成形品なので変形しやすく、デッキプレート1枚幅に1ヶ所程度の溶接では、コンクリート打ち込み時の床ならしや、仕上げ作業時にデッキプレートの断面形状が保たれにくく、コンクリートのひび割れの原因になります。
焼抜き栓溶接の場合は、デッキプレート各溝全てに溶接することになっていますが、頭付きスタッド仕様の場合も、デッキプレート各溝全てをアークスポット溶接するのが望ましい。

2.施工上の留意点
1) 水セメント比の小さいコンクリートを用いる。
  コンクリートは原理的には乾燥収縮を防ぐことは出来ず、ある程度の収縮によるひび割れは発生します。しかし、床スラブひび割れの大部分はコンクリート配合の水量をできるだけ少なくすることにより、いわゆる硬いコンクリートで抑制することができると考えられます。
下記に推奨コンクリート配合(床用)を示します。
 
単位水量  175 リットル/m3 以下 スランプ15cm
ベ−スコンクリートスランプ  10cm
高性能AE減水剤
 
2) 溶接金網の位置を確保する。
  ひび割れの発生している個所を調査すると、溶接金網の位置がかなり深い場合が多く見受けられます。溶接金網はひび割れ抑制のために入れていますので、鉄筋の錆を考慮してコンクリートかぶり厚さ30mmを確保して、できるだけコンクリート表面に近い位置に取り付ける方が効果的です。設計コンクリート厚さと鉄筋径を考慮して、コンクリート打設時に移動しない適切な高さのスペーサを選択して下さい。
3) コンクリート打込み後初期には湿潤養生を行い、充分な養生期間を設ける。
  コンクリートは28日強度を前提に設計しており、負曲げモーメント等の検討も当然強度発現後を前提に行なっています。打設後3、4日では強度は30%程度しか発現しておらず、冬季ではもっと低くなります。通常ひび割れが入るのは打込み後1週間から1カ月以内であり、ほとんど設計荷重は載っていません。
このような状態で負曲げモーメントを検討しても応力状態は低く、ひび割れの発生を説明することは出来ません。
デッキ合成スラブの床はRCスラブと異なり仮設材がありませんから、コンクリート打込み後は一見、床はきわめて綺麗で作業性がよく、またデッキプレートがあるので強固に見え、このため翌日より床の上で作業が行われている場合もよく見受けられます。
以上のことから、コンクリート打込み後初期には急激な乾燥収縮が生じないよう、散水や養生シート等を用いて湿潤養生するとともに、打込み後4〜7日間はスラブに振動や荷重を加えないように、充分養生期間をとるのが望ましいのです。
4) デッキ合成スラブのコンクリートのひび割れの原因一覧
  注)太字番号はデッキプレート床特有の原因
 
分 類 ひび割れの原因 備 考
A.設計 1.鉄筋量不足
.コンクリート厚さ不足(デッキ山上部)
3.小梁等、梁の剛性不足
4.スラブのスパン過大
5.スラブ面積過大
6.補強筋不足(柱廻り、大梁上等)
7.細部設計不備(開口部、埋設物廻り補強等)
8.大断面S梁時の配慮不足
B.材料
   ・セメント
   ・骨材
   ・コンクリート
   ・デッキプレート
1.セメント不良(異常凝結、膨張等)
2.骨材不良(低品質、反応性骨材、泥分等)
3.調合不適(水セメント比大、セメント量大)
4.乾燥、収縮
5.コンクリートの沈み、フリージング
.デッキプレート特有の凹凸形状
.コンクリートの余剰水が抜けない
C.施工
   ・コンクリート
   ・鉄 筋
   ・デッキプレート
1.長時間の錬りまぜ
2.ポンプ圧送時の水増し
3.締め固め不足
4.不適当な打ち継ぎ
5.初期養生中の急激な乾燥
6.硬化前の振動や載荷
7.初期凍害
8.施工不良(乱れ、位置、継ぎ手等)
.コンクリート打込み時、既打込みデッキプレ
   ート部分への振動
10.サイドジョイント不良(幅方向の変形差)
11.デッキプレート支保工の不良
   (沈下、養生期間等)
12.デッキプレート木口、継手からのノロ、
   水漏れ
D.環境 1.温度変化(養生時、完成後の屋上階床)
.デッキ下面の冷込み
 
E.荷重 1.オーバーロード
2.特殊荷重(集中、繰り返し荷重等)
 

3.コンクリートひび割れの補修方法
  コンクリートひび割れの補修方法としては、一般にエポキシ樹脂注入による方法がとられています。ひび割れ幅の大きさ、量等により補修費は異なりますが、問い合わせ先は下記のとおりです。      
補修業者名:ABC商会 化成品事業部
       URL[http://www.abc-t.co.jp/]
                    (東京)03(3507)7236
                    (大阪)06(6944)3423


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