施工 Q−06:
合成スラブデッキプレートを梁に接合する方法として、焼抜き栓溶接が認められていますが、この工法の標準仕様はどのようなものですか? また標準仕様で通常のデッキプレートの溶接と異なった項目、制限があればその技術的理由も提示願います。
A: 焼抜き栓溶接の標準仕様としは以下のようになります。
この溶接法は、梁に密着したデッキプレートを低水素系溶接棒のアーク熱で貫通溶断して所定の孔径を得た後、溶融金属を盛り上げていく工法である。一般に薄板の溶接では、梁とデッキプレートの隙間に溶着金属が入り込み、デッキプレート端部を昇温させ焼き切れが発生しやすいが、他の溶接棒に比べ低水素系溶接棒の溶融金属の粘性は高く、梁とデッキプレートの隙間に入り込まず、溶融金属はデッキプレート上に盛り上がっていき、安定した円形の余盛りが形成される。
溶接棒の種類及び棒径 : 低水素系被覆アーク溶接棒 4.0mmφ
                        (JIS Z 3211-E4316、JIS Z 3211-E4916)
溶接電流 : 190〜230A(標準210A)
余盛径 : 18 mm 以上
梁フランジ板厚 : 6 mm 以上
溶接作業者 : JIS Z 3801あるいはJIS Z 3841において基本となる級を有する資格者
注  1) デッキプレートと梁との隙間が2mmを超える箇所は、デッキプ レートをハンマーなどで
叩いて隙間を2mm以下に押さえる。
   2) 溶接不良部は、スラグを除去後デッキプレートのまくれ上がり箇所ををハンマーなどで
叩いて梁に密着させ、溶着金属の上から再溶接する。
「仕様の解説」
溶接棒種類
低水素系溶接棒と他の種類棒 (ライムチタニア系、高酸化チタン系、イルミナイト系) では溶融金属の粘性が大きく異なる。 デッキプレートと梁材との隙間が無い場合は全ての溶接棒での作業性に大差は無いが、隙間があると低水素系以外の溶接棒では、粘性が低いため溶融金属が隙間に入り込み、デッキプレート温度を上昇させ、溶融金属をデッキプレート端に盛り上げようとすると、デッキプレート端に焼き切れが発生しやすい。これに対し低水素系は粘性が高いため隙間に入り込み難く、デッキプレート端に盛り上がる。この差はデッキプレートと梁との隙間が大きくなるほど顕著となる。隙間0〜1mmでは、ライムチタニア系でも、かなりの溶接技量があれば焼き切れなしの溶接も可能であるが、1mmを超えると技術的に不可能となる。それ故デッキプレートと梁との隙間2mmに対応でき特別の高い溶接技量を要求しない低水素系溶接棒に限定した。
溶接棒径
3.2 mm 径棒と4.0mm 径棒では、単位時間当たりの溶融金属量が異なり、仕様では低電流を目標としているため3.2mm 径棒では盛り上げのための作業時間が大となり、また時間が長くなるほど焼き切れは発生し易くなり、隙間が大きくなるほどこの差は顕著となるため4mm 径棒に限定した。
電流
現場での充分な仮設電源の確保が困難な場合を考慮して、最も汎用なエンジンウェルダー(容量250A)を想定し、コード延長による電流ドロップも考慮して230Aまでとした。下限値は、溶け込みが充分保障される電流値が160Aであり、電流ドロップも考慮して190Aとした。
許容隙間
実験では低水素系溶接棒では、隙間3mmでも溶接耐力は確保されたが盛り上げのための溶接時間が長くなり当然焼き切れ発生率も高くなることが予想されるため安定した溶接が保証される2mmまでとした。
溶接径
長期設計許容耐力に対して3以上の安全率の確保のため、また溶接時間を考慮して18mm以上とした。 なお上記溶接棒、電流値での溶接では自動的にこの18mm径は確保される。
梁フランジ厚
上限電流値230Aで溶け落ちが起こらないように6mm以上に限定した。
焼抜き栓溶接1個あたりの許容剪断力
焼抜き栓溶接の最大耐力は、溶接部近傍のデッキプレートの破断により決まり、デッキプレートの材質(強度、板厚)、溶接余盛径に依存する。 試験結果から、最大耐力を、デッキプレート材料規格下限値(最小板厚、最小材料強度)時の値に換算し(修正耐力)、溶接径は最小径18mm時に換算し、長期許容応力度の安全率を3以上確保するようにし、使用材料はF値の最も小さいもの(SDP1T、F値=205N/mm2)、溶接径は最小18mmとして下記の許容剪断力を定めた。
デッキプレートの板厚 長期 短期
1.2 mm 4,900 N 長期に対する値
の1.5倍
1.6 mm 7,350 N
焼抜き栓溶接施工要領
1、適用範囲
本要領書は合成スラブの合成スラブ用デッキプレートと鋼構造建築物の梁材との接合に「新仕様の焼抜き栓溶接」を用いる場合の施工要領に適用する。
2、溶接作業者
溶接作業者はJIS Z 3801(溶接技術検定における試験方法及び判定規準)あるいはJIS Z 3841(半自動溶接における試験方法及び判定規準)において基本となる級を有する資格者とする。
3、溶接に必要な材料及び設備
  1) 溶接棒:JIS Z 3211-E4316、JIS Z 3211-E4916に定める低水素系被覆アーク溶接棒、棒径は4mmとする。
  2) 溶接機:交流アーク溶接機AW250A以上またはエンジン溶接機230A以上
4、標準溶接条件
  1) 溶接電流梁フランジ板厚   溶接電流(A)
6mm以上                         190〜230A (標準210A)
5、焼抜き栓溶接の端あき、へりあき
  1) デッキプレート
 ・長手方向(溝平行方向)の端あき: 25mm以上
 ・幅方向(溝直角方向)の位置   : 溝の平板部の中央部
  2) 梁材のへりあき : 25mm以上
 ただし、角形鋼管等のように部材にRがついている場合は、平坦部で25mm以上とする。
梁材がH形鋼などの場合 梁材が角形鋼管などの場合
6、溶接要領
1) 準備作業
  1-1) 合成スラブ用デッキプレートを梁上フランジ面によくなじませ、その隙間を2mm以下になるようにデッキプレートを敷込み、仮止めする。
  1-2) 溶接部の汚れ、水分を除去する。
  1-3) 使用する低水素系被覆アーク溶接棒は新しい溶接棒を準備し、溶接に着手する直前に開封する。
2) 溶接時の環境条件
  2-1) 気温、天候、その他の溶接時の環境条件は日本建築学会「建築工事標準仕様書JASS 6 鉄骨工事」に準拠する。
3) 電流値の確認は検流計で測定する。
または、未使用の低水素系被覆
アーク溶接棒4mmφを用いて、
アーク長さを約3mmに保持しな
がら、10秒間溶接したときの溶接
棒の消耗長さが45〜53mmであ
ることを確認する。


4) 溶接作業(運棒方法)
1.アーク発生 2.デッキプレート焼抜き 3.押し込み溶着 4.整形(溶着金属を整える)
デッキプレートを梁になじませる(隙間は2mm以下)
中央でアーク発生
棒は垂直に
溶接棒を若干引上げてアークを飛ばす
直径10mm弱で「の」の字を書いてデッキプレートを焼き切る
溶接棒を押し込む
焼抜きの内側へ縁の中央へゆっくり2〜3回転運棒
            
デッキプレートを梁になじませる(隙間は2mm以下)
中央でアーク発生
棒は垂直に
           
      
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