構造 Q−15:
鉄筋コンクリート梁へのデッキのみ込みについて
断面欠損にならないか、梁をふかすのは経済上デメリット、ふかした部分の配筋はどうするのか?
A−1: 曲げ応カ度を検討する場合
日本建築学会の各種規準の中でも、合成スラブを梁にのみ込ませたときの取扱いについての記述はない。
しかし、曲げ応力度について検討する場合、断面欠損となる箇所を無視したときと、そうでないときの中立軸の位置を計算し、中立軸の位置がどの程度移動するかによってその影響度の大きさが判断できる。
合成スラブを梁の中に30mmのみ込ませたときに、そののみ込み部分が仮に断面欠損となるとしても、中立軸の位置を大きく変えるほどの影響度はないので、曲げ応力度を検討する場合には、「のみ込み」については無視することができる。

[参考]以下に示す図のようなT型の断面形状において切欠き”■”の有無によって、その中立軸の位置がどう変化するかを試算して下表に示す。
  切欠き無 切欠き有 比率%
中立軸の位置
cm
y1 20.72 20.79 99.7
y2 39.28 39.21 100.2
断面二次モーメント
cm4
1,127,609 1,125,502 100.2
断面係数
cm3
Z1 54,425 54,129 100.5
Z2 28,706 28,707 100.0

A−2: せん断応カ度について検討する場合

日本建築学会の各種規準の中でも、合成スラブを梁にのみ込ませたときの取扱いについての記述はないが、「プレストレストコンクリート(PC)合成床板設計施工指針・同解説」(94年11月発行)のなかでは、次のような記述(解説)がある。
PC合成床板の端部が、切り欠かれた梁(Dapped End)で支持される場合、その部位に作用する曲げおよびせん断力ならびに想定される各ひび割れに対する検討を行うこととする。その検討方法は原則として実験などによるものとするが、ACl Code 318 ”Chapter 11.7 Shear Friction” およびPCI Design Handbookの ”Part 6.13 Dapped EndConnections” を参照してもよい。
また、東京電機大とビー・エス・コンクリート鰍ニが共同して行った「PC合成床板」に関する実験の結果として、次のような報告がある。 
高強度のPC合成床(FC≧600 kg/u)を梁の両サイドにのみ込ませた鉄筋コンクリートのT形梁について、地震時水平力を想定した繰り返し荷重の載荷試験によりせん断破壊性状を把握し通常の一体T形梁と比較検討することを目的にした試験を実施した。その試験の結果から、高強度の合成PC版を用いたT形梁のひび割れおよび破壊性状、履歴性状、曲げ・せん断ひび割れおよび最大せん断強度などの力学的特性は一体打ちした通常のRCT型梁と同等あるいはそれ以上の性能を有することが確認された。(プレストレストコンクリート、Vo1.31 No.3, May 1989)
この実験報告から類推して「合成スラブ」の場合にも、梁へののみ込みがあってもRC梁と同等の性能を有するとも考えられる。しかし、実験による実証を行っていないので、全断面が有効であるとは云いきれない。従って、現段階では、構造設計者の判断にゆだねざるを得ないが、”のみ込み部分は断面欠損になる、”と考えてせん断応カ度を検討することが望ましい。とくに、エンドクローズされたデッキプレートで、エンドクローズ部のフラットの部分の長さが短く、スロープ部分がのみ込み部分の中に入るような場合には、断面欠損になると考えた方がよい。

A−3: ふかしについて

構造的な納まりあるいは意匠的な納まりなどから、必ずといってよいほど、”ふかし”は行われる。従って、ふかしの厚みによってどう補強するかは設計図書の中で特記されているのが普通である。とくに、当初からRC造に対して合成スラブを採用するべく設計されている場合(ふかしによる工法は少ないとは思われるが)には、それに対応した設計がなされているため、設計図書に従えばよい。
ふかしが質問のように大きな問題になるのは、設計完了後に設計変更して床スラブを合成スラブに変更しようとする場合であると考えられる。梁断面に余裕かある場合はよいが、そうでないときには”ふかし”で対処しようということになるが、この場合には、次のような問題点(検討事項)が生じる。

1. 意匠上の問題
* 梁をふかしたとき、とくに梁が柱の外面合わせになっている場含、仕上げ材の納まりに不都含はないか
* 上記のような場合でRC壁があるときに、RC壁までふかすとなれば、空間の内法寸法は小さくなり施主との問題にまで広がる可能性がある。

1. 構造上の問題
* 梁がふかされたとき、梁の剛率が増加し剛比が微妙に変化するので、構造的に影響はないか。
* 梁自重が増加するので、各部材の断面設計に影響はないか。

3.コストの問題
* コンクリート、およびわずかではあるが型枠などの数量が増加してコスト増となる。

一般的にはRC造のスパン割(スラブ支持間隔)は鉄骨造に比較して大きいため、無被覆耐火構造の範囲(内法で3.4m)を越え、耐火被覆が必要になることが十分に考えられる。この場合、当然のことながらコスト増の大きな要因となる。施工業者あるいはメーカ−が合成スラブヘの仕様変更を希望しても、このように検討事項が多いので、先ず設計者の判断を仰ぐ必要かある。床スラブ端部の鉛直方向のせん断カは15〜20 kN/m程度であるが、このせん断力を伝達するために必要なコンクリート厚は数cmあれば十分である。梁丈は十分に大きいので構造的に大きな問題にはならない。従って、ふかしたための特別な補強は必要ないと考えられる。しかし、ふかし部の補強の必要性の有無についても他の構造の問題と合わせて構造の担当者の判断を仰ぐにこしたことはないと思われる。
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