構造 Q−09:
無被覆耐火合成スラブを駐車場の床に使用する場合の注意点を教えてください。
A: 合成スラブは、駐車場用途に多く使用されており、我が国においても、既に合成スラブの実績は30年以上になります。以下に、設計、施工上の留意点を示します。
T)設計上の留意点
    1)駐車場の設計用床積載荷重は、表-1のとおりです。
表-1 駐車場の設計用積載荷重                (N/m2
種  類 床設計用 大梁・柱・基礎設計用 地震力を計算する場合 備  考
乗用車専用 4,000 3,000 2,000 東京都、大阪府他条例
一 般 用 5,400 3,900 2000 施行令第85条
    2) 駐車場の設計用床積載荷重に見合う無被覆耐火合成スラブの仕様は、下図のとおりです。この図から駐車場には、デッキせいが50mmで、スパン2.7m以下、同75mmで、スパン3.4m以下で使用できることが分ります。
同図には、連続支持デッキ合成スラブと単純支持デッキ合成スラブの両方の条件を満たすものが示されています。なお、連続支持とはデッキプレートが2スパン以上に跨った納まりの条件のもので、他方単純支持は、デッキプレートが1スパン支持で納まりかつ溝配筋(D13-@300)が必要な仕様のものです。

a)2時間連続支持デッキ合成スラブと単純支持デッキ合成スラブ
b)1時間連続支持デッキ合成スラブと単純支持デッキ合成スラブ
    3) ひび割れ拡大防止対策
ひび割れ発生およびその拡大を防ぐには、(1)柱の周囲を鉄筋で補強する、(2)梁上の補強としてD10-=1000mmを追加配筋する、あるいは(3)溶接金網φ6-150×150で重ね補強するなどの対策が有効と考えられます。なお、ひび割れ拡大防止は、設計対策だけで解決できるものではなく、施工と併せて管理することが大切です。
    4) 繰り返し荷重(及びクリープ)について
合成スラブの耐力は非常に大きく、表-1に示す設計用床積載荷重に対して最大耐力は、3〜5倍程度あります。通常使用される条件で、デッキプレートに生ずる引張応力は、(長期許容応力度)、コンクリートに生じる圧縮応力は、(長期許容応力度)と比較的低応力の状態で使用されるため、材料自体の疲労強度については、ほとんど影響がないと考えられます。
繰り返し荷重が、合成効果に及ぼす影響は不明な点もありますが、2〜3の論文(*1)が報告されていますので参考にして下さい。これらの論文によると、駐車場用途程度では疲労強度の影響はほとんどないことが確かめられています。ただし、梁上のひび割れに関しては、適切に補強することが必要であると指摘しています。さらに、外国の実験例では、終局耐力の1/3以下の繰り返し荷重については、影響を受けないという報告もあり、我が国で、30年以上にわたるデッキ合成スラブ駐車場の実績から、疲労強度に関しては特に問題は生じないと考えられます。

    *1)参考文献
         1) 小森清司;「合成コンクリートスラブの耐久性」、コンクリート工学年次論文報告集.12-2.1990
2) 小森清司ほか;「多数回の繰返し荷重を受けるデッキプレート合成床スラブの疲労特性」、コンクリート工学年次論文報告集.13-2.1991
3) Y.Itoh,et.al(1992)”REPEATED POINT LOADING TESTS ON COMPOSITE SLABS”,Eleventh International Specialty Conference on Cold-Formed Steel Structures,St.Louis,Missouri
4) 上瀧修平ほか;「多数回繰り返し荷重を受けるデッキプレート合成スラブの力学的挙動に関する実験的研究 (その1)単純支持された合成スラブの場合の実験概要」、日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿).1996.9
5) 加美宏樹ほか;「多数回繰り返し荷重を受けるデッキプレート合成スラブの力学的挙動に関する実験的研究 (その2)単純支持された合成スラブの場合の実験結果」、日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿).1996.9
6) 上瀧修平ほか;「多数回繰り返し荷重を受けるデッキプレート合成スラブの力学的挙動に関する実験的研究 (その3)支持梁上の合成スラブが負曲げを受ける場合の実験概要」、日本建築学会大会学術講演梗概集(関東).1997.9
7) 加美宏樹ほか;「多数回繰り返し荷重を受けるデッキプレート合成スラブの力学的挙動に関する実験的研究 (その4)支持梁上の合成スラブが負曲げを受ける場合の実験結果」、日本建築学会大会学術講演梗概集(関東).1997.9

    5)
     (a)
地域による使用制限
海岸地域
海岸地域では、海からの飛来塩分などの腐食促進物質によって局部的に腐食が、進行することがあります。それを防止するためには、溶融亜鉛めっき鋼板(Z12、亜鉛の最小付着量120g/m2以上)を用いた合成スラブ用デッキプレートを採用し、さらに上塗り仕上げ用塗装を施すのが好ましい仕様と考えます。亜鉛めっき鋼板に塗装する場合、正しい塗装条件を守り、使用目的に合致したものを選定することが大切です。詳細は、塗装メーカーにご相談下さい。一般に、調合ペイント、エポキシポリアミド樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料は、密着性がよいと云われています。なお、2、3年毎に目視検査をおこない、必要個所をペイント補修するのが望ましい。
近年、高耐食性めっき鋼板が開発され、海岸辺りの厳しい環境条件に適用される例も増えてきています 。
     (b) 積雪地
積雪地では、融雪のために塩化カルシウム(=食塩→鉄の腐食に有害)が使用され、タイヤなどに付着した塩化カルシウム溶液は、床スラブのひび割れなどから浸水し、デッキプレートを急速に腐食させます。積雪地では、以上のような環境を配慮した建物設計、例えばタイヤ洗水装置の設置などを検討することが大事です。
    6)

(a)
(b)
(c)
摩耗対策
タイヤによる床スラブのすり減り対策としては、次の方法が考えられます。
すり減りを予想したコンクリートの増し打ち
フェロコン、カラ−クリ−トなどの塗り床
樹脂系、浸透性塗り床

U)施工上の留意点
    施工条件は、事務所床などと比較して厳しいといわれています。主な留意事項は、次のとおりです。
    (1) デッキ合成スラブは、スラブ鉄筋量が少ないので、埋込金物(自動車ストッパー用、或いは車止め用など)の定着には、工夫が必要です。コンクリート打設前に予め計画され、かつ固定された補強鉄筋や補強金物などは確実にコンクリートに定着させます。コンクリート打設後にコンクリートをはつり、埋込金物を据付ける施工方法は好ましものではありません。
    (2) 溶接金網は、所定のかぶりを確保し、必要に応じて補強筋の敷設を考えることが大切です。施工時、溶接金網を踏みこみ、所要の高さ(必要なかぶり厚さ)が確保されない場合、ひび割れの発生やその拡大の可能性が高まりますので、所要量のスペーサーを配し、溶接金網の高さ保持に努めて下さい。
    (3) コンクリートは、傾斜路での厚さの確保、或いは摩耗などを考慮した場合、スラブ厚は設計寸法より厚めにすることが望ましい。
    (4) 単位水量の少ない、スランプは15cm以下の硬練りのコンクリートを打設して下さい。打設時、突き固めは入念におこない、打設後の養生期間を充分に確保することが大事です。デッキプレートは振動し易く、作業者が歩くだけで揺れます。コンクリート打設後は、コンクリート強度がまだ発現していない状態であり、デッキプレートのみで支持しているため、スラブは振動しやすい状態です。このためスラブの上で作業すると、容易にひび割れの発生を招きます。スラブ上での作業を禁止し、4〜7日以上の湿潤養生を行なうことが肝要です。
    (5) ひび割れ抑制対策として、膨張材の使用が効果を発揮している事例が最近報告(*2)されています。詳しくは「膨張材協会(TEL 03-5290-5373)」にお問い合わせ下さい。
    (6) 駐車場では、天井あらわし仕様が殆どですので、デッキプレート同士の接合は入念に行ない、コンクリートの漏れがないように施工して下さい。

    *2)参考文献
         1) 佐竹紳也ほか;「合成スラブにおける膨張材のひび割れ低減効果に関する検討」、日本建築学会大会学術梗概集(近畿).2004.9
2) 小柳光生;「建築構造物における施工面での制御対策」、コンクリート工学.Vol.43,No.5,2005.5

以上  
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