構造 Q−03:
鉄骨梁と合成スラブを焼抜き栓溶接で接合した場合、この梁を合成梁として設計することはできますか?
A: 合成梁は、床スラブと鉄骨梁とを結合し、断面性能が鉄骨梁のみより増大することを期待する設計方針であり、そのためのシャーコネクターは、鉄骨梁もしくは床スラブが全塑性になるまでその機能を保持することが要求されます。この設計については、「各種合成構造設計指針・同解説(日本建築学会)」に詳細に述べられており、適用範囲 1.1.4にシャーコネクターには頭付きスタッドを用いると規定されており、焼抜き栓溶接を用いて合成梁として設計することはできません。
解説:付資料に焼抜き栓溶接を用いた実験を示します。
かなりの合成効果を発揮しますが、頭付きスタッドを用いたものに比べるとその最大耐力は低くなります。それは右図のごとく頭付きスタッドの場合はデッキ山上コンクリート内にスタッドが存在するため、スラプからせん断力は、スタッドを介して鉄骨梁に伝達されるが焼抜き栓溶接の場合右図のごとくリブ溝内コンクリートのせん断破壊によりその耐力が決定されるためと考えられる。
  しかしながら、デッキと梁とを、焼抜き栓溶接で接合すれぱ、ある程度までは梁は合成梁としての挙動を示します。事実小梁に直交して敷設された合成スラプ用デッキに、焼抜き栓溶接が施されてあれぱ、床の歩行による振動程度の低荷重域では、梁は合成梁として挙動し、床振動数の実測値は合成梁と仮定した計算値とよく合致します。
ただし梁サイズはH−400シリーズ程度であり、あまり大きなサイズの小梁については実測データも無く、合成効果は明確ではありません。したがって、400シリーズ程度の小梁を鉄骨梁のみで設計し、振動障害の検討時に合成梁(合成度50%程度の不完全合成梁)として仮定することは現実的です。
一方、大梁の場合、一般的に梁サイズが大きくなり、また負曲げモーメント区間が存在しますので、鉄骨梁のみの設計とするか、必要があれぱ、頭付きスタッドを用いて合成梁として設計して下さい。

付資料-1: 焼抜き栓溶接を用いた合成スラブと鉄骨梁の合成梁の実験  川鉄建材工業
付資料-2: スタッドコネクターのせん断耐カ表   日本建築学会「各種合成構造設計指針・同解説」




【構造-3 付資料−1】
焼抜き栓溶接を用いた合成スラブと鉄骨梁の合成梁の実験(抄録)
川鉄建材工業 技術資料

1)実験概要
1. 試験体
計画した8体の試験体の諸元を表1に示す。梁長さはすべて5.5mとした。
鉄骨梁のサイズは、H−300シリーズとして、フランジ150oと200oの2種とした。
デッキ上のコンクリート厚さ、幅は表1に示す通りで幅80p、厚8pを主とした。焼抜き栓溶接のピッチはデッキの形状によって決まり、60p幅当たり3〜5ヶ所である。
また、No.2はデッキを梁と平行に敷き込んだもので、溶接ピッチは2−@300とした。
頭付きスタッドは16φ =120oをデッキプレートを貫通して溶接した。(No.7&8)
コンクリートはすべて普通コンクリート設計基準強度 210s/pとした。 
またワイヤーメッシュを全面に配し、そのサイズは、表1の通りである。
実測したコンクリート圧縮強度及び梁の降伏点を表1に示す。
スタッド付きの試験体の合成度は30%として、コンクリートの面積を決めている。
デッキは、当社QLデッキの旧タイプ QL750、QL400 及び新タイプ QL99-75、QL99-50の4種類とし、No.2以外はデッキを梁に直交して敷き込んでいる。またNo.3と5は鉄骨梁、メッシュピッチ以外は同じ形状で、梁の全塑性耐力を変化させて、接合耐力の変化を調べるために計画したものである。

表1 試験体諸元


2)試験結果



表2 実験結果一覧表


3)焼抜き栓溶接によるコネクターとしての終局せん断耐力
1. 不完全合成梁としての全水平せん断力Q’hよりデッキプレート1山当たり(/ribとする)の終局せん断力について計算すると表3のようになる。但し、これらはデッキプレートを梁に直交かつ連続状態で敷設したもののみを対象としている。
今、qmax/ribをで除して縦軸に、横軸に(Bd/Hd)3/2を取ってプロットすると図1の如くなり、qmax/ribはほぼ(Bd/Hd)3/2に比例していると言える。
Bdはデッキプレート溝中のコンクリート平均幅、Hdはデッキプレートのデプスである。

表3 デッキ各溝当たり終局耐力
(4)注   (Bd/Hd)3/2 (ton)

デッキ各溝当たり終局せん断耐力(計算)
(Bd/Hd)3/2 (ton)


一方デッキプレートを梁に平行に配置したbQのQ'hより焼抜き栓溶接1ヶ所当たりの終局せん断耐力を計算すると94.3ton/(2.45/0.3×2)=5.77 ton となり焼抜き栓溶接自身の破断耐力(≒3ton)をはるかに超越している。
これはH形梁上でコンクリートの摩擦抵抗があり、この抵抗が寄与しているためと考えられる。
No.2試験体では焼抜き栓溶接は破断していないが、最大耐力時にほぼ耐力に達していたものとし、先の超過分 5.77-3=2.77 ton/30cmを摩擦抵抗力とすると、幅は約10pであるので摩擦抵抗による終局せん断付着応力は τ=2770/30×5=18.5 kg/cm2となる。

4)スタッドコネクターのせん断耐力
表4にスタッドコネクターのせん断耐力を指針により求めた値及び曲げ実験より推定したQ'hより求めた値を示す。
表4 スタッドコネクターの終局せん断耐力
曲げ実験結果より推定したスタッドコネクターのせん断耐力は指針による値より
36%〜56%大きい。




【構造-3 付資料−2】
    スタッドコネクターのせん断耐力表
日本建築学会「各種合成構造設計指針・同解説」による。
1.等厚なRCスラブの場合
表1.
2.デッキプレートが鉄骨ばりに直交、かつ、連続して敷設された場合



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